2019年は日本の第三次タピオカブーム
2019年は日本で空前のタピオカがブームが起きた年だ。流行語大賞やヒット商品番付にもノミネートされ、「貢茶」「THE ALLEY」のような様々なブランドが現れ、個人経営のタピオカ店舗も雨後の筍のように出店されるようになった。
実は日本のタピオカブームは今回で3回目である。第一次ブームは1992年に白いタピオカが入ったココナッツミルクが流行った時、 第二次ブームは2008年に黒いタピオカが入ったミルクティーが流行った時、そして今回は「第三次ブーム」である。
今回のブームの特徴は、街頭ドリンクスタンドとは異なる高級感、「入れたて」「本格」がキーワードになったことであり、値段も600円前後と高価格帯に設定されていることである。ミルクフォーム、チーズフォームなどのトッピングを加えると700円以上になる。
中国でタピオカはロングセラー
中国では90年代後半にタピオカが上陸してから長年人気が続いている。道端のドリンクスタンドから始まり、高級感の溢れる路面店が出てくるなど、幾度も進化の歴史を経ている。市場規模も2019年現在で全国で45万店舗、500億元(約7570億円)の大きさである。
では、中国の市場はどう変化してきたのか、今後はどう変化するのか、中国市場のタピオカの歴史について解説してみたい。
タピオカの歴史を見ると「街頭時代」「ブランド戦国時代」「消費グレードアップ時代」の3つに分けられる。「街頭時代」は道端のドリンクスタンドスタイルで粉末を原料にしていた時代、「ブランド戦国時代」は大手資本が参入し急速にフランチャイズ展開した時代、「消費グレードアップ時代」は高級感のある店舗、こだわりの原料、総合的マーケティング戦略の時代である。
【黎明期】街頭時代(1990年代後半)
1997年、台湾で生まれたタピオカミルクティーはブランド「快立可」とともに中国本土へ渡った。各地で喫茶文化が広まり、密かに人気を集めた。その頃使用されていた原料は、非常に安価なインスタント粉末が主流であり、お茶もミルクも使用していなかった。多くの店舗は学校の近くにあり、面積もそれほど広くなく、テイクアウトが基本だった。その時に生まれたのが「封口機(カップシーラー)」である。今はタピオカミルクティー店舗の標準装備品だ。
カップシーラー
【発展期】ブランド戦国時代(2000年代~2010年代前半)
タピオカの流行は投資家にも注目された。2000年代に入り、喫茶ブランドが続々と立ち上げられ、市場シェア争奪戦の中、競争に負けないように品質改善がなされた。フルーツ原液や、紅茶、クリーミングパウダーなどを配合するのがこの時代の特徴だ。この時代、「CoCo都可(ココトカ)」、「快楽檸檬(ハッピーレモン)」、「風行茶飲(Popular Fashion)」などのブランドが出てきた。2007年には喫茶業界はさらに加熱し、狭い路面店舗からショッピングモールへと主戦場が移っていった。
一方で、2005~2008年頃は、タピオカミルクティーの負の側面にもフォーカスが当てられた時代である。報道で「ミルクが入っていない」「ゴムタピオカ」「添加物」「化学原料」といったことが取り上げられた。追い討ちをかけるように、2008年リーマンショックが個人経営や零細ブランドを倒産に追い込んでいった。
【飛躍期】消費グレードアップ時代(2011年~、)
2011年に台湾可塑剤事件が報道され、一部のブランドは窮地に追い込まれた。一方で、品質を重視したプレイヤーが頭角を現わし、台湾の「贡茶(ゴンチャ)」が原材料、製造工程にこだわったことで人気となり、たった1年で270店舗(直営と加盟店合わせて)を展開した。「贡茶(ゴンチャ)」が成功したことにより、喫茶業界の高級化が一気に進展した。
2016年、中国消費市場に大きな変化があった。品質重視だけではもはやブランド間の差別化はできなくなり、「喜茶(HEY TEA)」に代表されるような、サービス体験やブランドイメージに重きを置くブランドが出現した。筆者の故郷天津でも「喜茶(HEY TEA)」の1号店ができた時には、連日2、3時間の行列ができた。行列をバックに、手に入れた喜茶を持って写真を撮り、それをSNSにアップさせることが若者の勲章だった。今では店舗が増え、オンライン注文予約もできるようになったので行列こそ無くなったが、今だに人気店である。
タピオカドリンクは、初期のドリンクスタンドから一級都市の大型ショッピングモールに場所を移すと同時に、価格も缶ジュースほどの値段からスターバックス並みの高単価なものに移り変わった。食品安全に対する法整備が整い、設備性能が向上し、可処分所得が増加したことで、消費がグレードアップした。また喫茶業界のメイン顧客は健康に対する意識が高く、新規性‧話題性も重視するミレニアル世代であり、オンラインオフラインを連動させる高度なマーケティング手法も発展した。
タピオカの今後
「2019新式茶飲料消費白書」(360Kr研究院)の調査によると、約8割の消費者は喫茶ブランドのコーヒーや酒類メニューにも興味を示している。お茶文化が根強い中国では、お茶とコーヒーの境界線は曖昧だ。例えば「喜茶(HEY TEA)」が2019年3月に発売したコーヒー飲料や、9月に発番したオレオとのコラボ商品はいずれも人気商品となった。
「喜茶(HEY TEA)」オレオ
「喜茶(HEY TEA)」コーヒー
集客力を上げるために、店舗開発も欠かせない。2019年7月「楽々茶(LELECHA)」が上海で1000平米の大型店舗をオープンした。ラボをテーマにした店舗であり、ドリンク、ケーキ、アイスクリーム、アルコール飲料、ブランドグッズも販売する。
LELECHA 上海旗艦店
喫茶ブランドのグローバル化が進展している。例えば東京で多くの店舗を展開した「THE ALLEY」は、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、シンガポール、タイ、オーストラリア、ニュージランドなど世界各地で展開している。
2020年は、新型コロナウイルスの影響で、飲食店舗はしばらく営業を停止していた。そんな折、中国SNSウェイボー上で「ロックダウン解除後にやりたいこと」の投票を行ったところ「ミルクティーを飲む」が2位にランクインした。”タピオカの行列に並びたい”、”前回ミルクティーを飲んだのはいつ?”などのつぶやきも多く、ミルクティーに対する情熱は薄れない。
多くの喫茶ブランドが億単位の融資を受け、タピオカはもうスモールビジネスではなくなった。これからは、メニューの多様化、多様な小売展開、経営のグローバル化が中国喫茶業界の発展を象徴するキーワードとなっていく。
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