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「フードデリバリーの許容時間」問題


 日本ではコロナの影響もあって、ウーバーイーツが拡大している。しかし中国でフードデリバリーと言えば「饿了吗」(ウーラマ)が有名だ。


 その「饿了吗」(ウーラマ)が最近「5分ほど待つことができますか?」という機能をSNSのweiboを通じて発表した(左がその写真)。


 このサービスは、ユーザーが「予定の到着時間より5分/10分ほど長く待つことができる」というボタンを押すと、お得なクーポンをもらうことができるというものだ。それによって、配達員が危険運転をせず、安全に配達することを目指している。


 この発表に対する反応は、好意的なものもあれば、批判的なものもあった。まず好意的なものだが「全然待てる。安全運転で来て欲しい」「この間、遅れそうになった配達員から電話がかかってきたので『急いでないから大丈夫です』と返したのだが、配達員が『私が急いでる』と言っていた、配達員も大変だなと思った」「30分くらい遅れても良い、そもそも大変な職業だし、特に天気が悪い時とか」といった反応である。


 一方批判的なものは、「これはプラットフォームと配達員の問題だ、忙しい時はプラットフォーム側でコントロールできるはずなのに、なぜユーザーに譲歩を求めるのか」「これはプラットフォームが勝手に作ったルールだし、もともとユーザーは配達料を払っているのに何でユーザーが配達時間を譲歩しなければならないのか」「ユーザーが配達時間を譲歩するよりも、プラットフォーム側が配達を調整すれば良い」などだ。


 このサービスが発表される前日の9月8日に「フードデリバリー配達員の現状」の記事がSNSで拡散された。「時間通りに配送できるように配達員たちが信号を守らないこと」「一方通行を逆走すること」「どんな悪い天気でもオーダーを受けること」などが書かれていた。また「配達員は時間通りに配達できなかったらプラットフォーム側から罰金されること」も書いてあった。


 実際、配達員の交通死亡事故は多く起きている。2017年上半期の「上海交通データ」によると、2.5日に一人配達員が交通事故で死亡している。同じ時期、深センでは3ヶ月に12人の配達員が交通事故で死亡している。2018年には、成都で7ヶ月に155人の配達員が交通事故で死亡している。


 こうした背景を受けて「饿了吗」(ウーラマ)が「待っても良い」ボタンをリリースした。そしてリリース後、中国中央テレビが「ボタンを追加することによって、配達員のストレスは軽減できると思うか」というアンケートを行った。回答者7.1万人のうち「軽減できる」と回答した人は61%、「軽減しない、プラットフォームが調整を行うべきだ」と回答した人が38%、「どちらともいえない」と回答したのは1%だった。



 この話題はかなり拡散したため、多くのユーザーが「5分/10分待つ」というボタンを押すことが予想される。しかしここで出た余裕時間で配達員がさらに多くのオーダーを受ける懸念もある。「プラットフォーム側で配達時間の計算式を見直すべき」という意見も徐々に大きくなってきている。


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