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中国Z世代を狙う金融サービスと問題点

最近話題になったアントの上場延期

 最近話題になったニュースの一つにアントの上海、香港市場での上場延期がある。なぜニュースになったのかというと、調達額が3兆7千億円と巨額だったこと、中国のEC界の巨人アリババグループのサービスであること、習近平氏が直接上場延期を決定したことなどが挙げられる。


アントはマイクロファイナンスの会社

 アントは金融サービスの会社で、マイクロファイナンスを提供している。マイクロファイナンスは、最近世界的に成長している低所得者層向けにお金を貸すサービスである。アントのマイクロファイナンスは「花唄(フアベイ)」という名前で、「お金を使おう」という意味がある。「花唄(フアベイ)」のサービスコンセプトは「未来のお金を使おう」である。


マイクロファイナンス花唄のユーザーは3億人超え

 花唄(フアベイ)のユーザーは既に3億人を超えている。特に中国のZ世代は、4人に1人が使っている。Z世代は1990年代後半以降に生まれた人を指す言葉で、ネットが当たり前の世界で育った層を指す。

 花唄(フアベイ)の仕組みはクレジットカードと同じだが、申し込みが簡単で、誰でも簡単に利用できる。自身の購買実績によって、少しずつ限度額が増えるのが特徴である。また、毎年11月11日の独身の日には自動的に限度額が拡張され、12月の返済日が延長される。独身の日はアリババが4兆円以上も売り上げるネットセールの日で、そこで消費してもらうために、上記の様な特典を付けている。


ネット上で批判される花唄の広告

 この花唄(フアベイ)の広告に関して、ネット上で批判的な意見が出てきている。いくつか紹介すると「花唄(フアベイ)の広告が嫌い」「違和感しかない」「中国の若者を支配しようとしている」「間違った価値観を広めるな」といったものである


とにかく消費を煽る花唄の広告

 では、実際にこれらの議論を引き起こしたいくつかの広告を見ていこう。


面子のために花唄(フアベイ)を使って、友達にご飯を奢ろう!

来年のお金を使って、今年を楽しく過ごそう!

普段はどんなに節約しても、娘の誕生日だけはちゃんとお祝いしないと。


 いかがだろうか。面子のためにお金を使おうとか、将来のことを考えずに今使ってしまおうとか、親心を利用して無い袖を振らそうとか、ちょっと眉をしかめる要素が満載な広告である。

 これらの広告は、借りたお金は返さなければいけないといった重要な要素が完全に欠落してしまっていて、若く世間知らずな低所得層に対して取るコミュニケーションとして、危険な匂いが充満している。

 実は今までもアリババグループの広告には、同じ様な要素がみられた。「ずっとネット通販の商品が家に届き続ければ、ずっとワクワクできる」「一つの口紅があれば全て解決できる。もしダメならセットで買おう!」といったものである。いずれも消費を煽るもので、花唄(フアベイ)の広告もこれらの延長線上でみられている。


問題化する若者の身の丈以上消費

 中国の若者は、自分たちの欲(ブランド品、旅行、外食など)を満たすために多額の借金をして、毎月の給料をそのまま返済に回しても足りないという人が増えている。それに伴って自殺や強盗事件も発生している。

 アリババグループからすると、タオバオなどのECサイトで買い物してもらい、お金が無ければ花唄(フアベイ)で借りてもらって、もっと買い物してもらうというビジネススキームなのだろうが、上記の社会背景を考えると、今後も批判は続きそうだ。


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