top of page

広告価値が急増するライバー

コロナ禍で爆発的に伸びたライブ販売市場

 中国の行政機関である、中国インターネット情報センター(CNNIC)が、2021年2月3日に発表した第47回「中国インターネット発達状況統計報告」を見ると、ライブ販売の利用者は、2020年12月時点で6.17億人に達している。この数は2018年12月末に比べて2.2億人増加している。以下のグラフを見ても分かる通り、コロナの期間中に急速に増加している。コロナでおうち時間が伸びて、ユーザーが増えたということだろう。











市場規模は既に1兆4千億円

 2020年上半期の市場規模を見ると、中国ライブ販売の市場規模は既に843.4億元(約1兆4千億円)に達している。ライブ販売を含むEC全体の市場規模が4561.2億元(約7兆8000億円)なので、ライブ販売市場はEC市場の2割程度を占めている。


成功したライバー

 最近、ライブ販売の女王と呼ばれている人がいる。薇娅(viya、びや)だ。元々薇娅は夫と共にアパレル店を経営していたが、EC販売が普及してきたのを見て、それまで経営していたリアル店舗7店舗全店を閉めてECに移行した。その後ECは成功し、2015年の11月11日独身の日に、1000万元超(約1億7千万円)を売り上げた。年間売上も3000万元(約5億1千万円)に達した。

 程なく2016年5月にタオバオからスカウトの電話が来た。「これからタオバオはライブ販売に力を入れるが、ライブ販売に興味はないか?」と。

 薇娅はすぐに了承し、ライブ販売を始めた。当時はまだライブ販売が浸透しておらず、開設当初のviyaチャンネルの視聴者数は年間で1.1万人であった。しかしタオバオ社が言った通り、タオバオはその後ライブ販売に力を入れ、ライブ販売アプリ、ライブ販売イベント、ライバー試合などどんどん施策を打ち出した。そして2017年頃からライブ販売は世間に知れ渡るようになった。

 2017年の年末には、タオバオ社が「人気ライバー収入ランキング」を発表した。ここで上述のviyaチャンネルは1位となり、年収は2500万元(約4億2千万円)ということが明らかになった。この頃からライバーは芸能人からも注目される様になり、様々な新規参入が相次いだ。


ド派手なファンイベント

 viyaチャンネルは、2017年から毎年5月21日にイベントを行っている。521(うーあーるいー)は我爱你(うぉーあいにー、私はあなたを愛している)に発音が近いので、これにちなんでいる。イベントには芸能人が登場、歌ったり演技したりなど盛り沢山である。

 以下の画像は2021年5月21日のイベントのオープニングシーンである。左がviyaで、有名ロック歌手とコラボしている。

 この日のセールのために用意されたブランドの顔ぶれは一流で、GUCCI、エスティローダー、ランコム、資生堂、アルマーニ、 DIORなどである。また中国国内で人気のある家電ブランドのシャオミやスポーツブランドのLI-NINGなども用意された。そして、この日付与されたviyaチャンネルで使えるポイントは総額1億元(約17億円)であり、これらのポイントは6月18日までviyaチャンネルで利用できる。5.21元セールも人気であり、非常に高額なものが5.21元(約90円)で買える。

 まさに人々を惹きつける一大イベントである。

 

 イベント当日には200万元(約3400万円)を中国の田舎の小学に寄付することも発表。社会貢献アピールもしている。中国の有名人は、社会貢献アピールをすることが一般的であり、その意味でもviyaは芸能人並みのセレブと言える。



宣伝媒体化するライブ販売チャネル

 上記のviyaチャンネルの様な売れっ子ライバーのチャンネルは、メーカーから見ても絶好の宣伝媒体である。viyaチャンネルの取り扱いアイテムが増えるに従って、ユーザーもますます増え、どんどん宣伝媒体としての価値が上がっている。

 viyaチャンネルのフォロワー数は2021年5月21日イベント終了時に7862万人に達した。その増加の速度は凄まじいものがある。画像はviyaのフォロワー数の推移を見たものだが、2017年に200万人程度であったフォロワーが、3年後の2020年に10倍の2000万人超に達し、わずかその1年後には4倍の8000万人弱となっている。










マーケティングの流れを変えるライブ販売

 今、中国の企業が商品を宣伝する時に、ライブ販売は一大チャネルである。多くのフォロワーを抱える人気ライバーに頼めば、あっという間に商品を浸透させることができるからだ。メーカーは資金提供して人気ライバーの誕生日を行うなど、人気ライバーの囲い込みに必死である。CM出稿など広告出稿の時代から、フォロワーマーケティングの時代にシフトしている様子が、ライブ販売の動向からもうかがい知れる。


bottom of page